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アートに触れる、パリの夏”Art d’été à Paris”

この夏のパリは本当に暑かった!日本も暑かった(今もまだ猛暑の日があるようですね)と思いますが、今年はヨーロッパ全体が暑く、近所でカフェを営むおじいさんもこんなに暑い日が続くのは初めてかも、とおっしゃっていました。

暑いと何が辛いかというと、自宅にいることが辛いのです。エアコンがある家はほぼゼロ、お店にだって備え付けてあるのは珍しいほど。ですので、今年の夏は涼を求めて色々なところへ行きました。涼しい場所といえば、美術館。この夏わたしが訪れたパリ市内の様々な美術館やアートスペースをご紹介します。

 

まずご紹介したいのはパリを代表する現代美術館、パレドトーキョー。この名称はかつて美術館の面する通りの名がAvenue de Tokioであったことに由来しています。現在は通りの名称は変わっていますが建物の名前だけ残りました。

現在9月までパレドトーキョーで開催されているのは“ENFANCE(こども時代)展”。アーティストの考えるこども時代とは何か、を訴えかけます。

また今年は日仏友好160周年にあたり、ジャポニズム2018としてパリ市内で様々なイベントが行われ、その一環として、パレドトーキョーの今回の展示にも日本人アーティストが参加しています。

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栗林隆さんの作品。小さなガラス板でできた3本の巨木。見上げるとそこには空が。現在ジャカルタで活動されている彼は、3つの異なる地、ジャカルタ、生まれ故郷である逗子、そして福島の空を海の中から撮られたそうです。

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京都で活動されている森千裕さんの作品。これとは別に壁画があり、実際に彼女が小さい頃に書いた落書きを投影して建物の壁に直接描きました。

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Patrit Halilajさんの作品。彼が拠点とするコソボの小学校の教室においてあった古い机とその机にある落書きを鉄の棒をつかって立体的に再現。小学生らしい落書きの中には、紛争で使われた武器の名前なども含まれている。

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Anna Hulačováさん。チェコ生まれの彼女が作り出す作品には顔がなくどことなく不気味な雰囲気。

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Ugo Rondinoneさん。舞台のあとなのか、疲れたピエロ(マネキンです)たちが座ったり寝そべったり。天井は虹色なのに、どこか寂しい空気が流れます。

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横山裕一さん。擬音語(オノマトペ)を使った漫画を描く漫画家。ギリシア神話に登場するキマイラの表情をステンドグラスに描いた。

多くの現代アーティストが参加した今回の展覧会。9月9日まで。

 

また最後にご紹介した横山裕一さんは、パリをはじめヨーロッパで注目されている漫画家とあり、同時期にパリ市内のGalerie Anne Barraultにて展覧会を開催していました。(展示はすでに終了)

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無表情の虫たちを鮮やかな色で描いた作品。彼の作品は無表情な登場人物が多く、その理由として普遍的なものを描きたいからだそう。能楽の面のように表情がなくても喜怒哀楽を表現できるような、そんな絵を描いていくことで何十年先も受け入れられる、普遍的なものを描き、その中の不思議さや面白さを表現していきたい、と語っています。

 

 

またこちらもジャポニズムの一環としての展示、“深みへ”展。シャンゼリゼ通りすぐそばに位置するロスチャイルド邸にて行われました。(本展示はすでに終了)

縄文から現代に至るまでをアートを通して日本の美意識を見せるという試みでした。

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19世紀に建てられたロスチャイルド邸。普段は一般公開されることはなく、プライベートイベントなどにのみ使われているそうで、中へ入れる機会は貴重。

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大巻伸嗣さんの作品。岩絵具を使って床一面に植物、花、鳥などの模様を描いた。IMG_7596

もの派を論じ、ミニマリズムの代表的作家、李禹煥さん。豪華絢爛な部屋に漆黒の岩の板を敷き詰め、二箇所に同じ岩の板を積み重ねた。固定されていないので上を歩くと岩がガタガタを音をたてて動く。プリミティブであり、どこか崩れそうな現代の日常を再現。

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名和晃平さん。巨大な泡でつくられた“FOAM”。次々に泡が生まれては消えていく、生命の根源を表現したような作品。巨大な生命体を目の当たりにしているようでもあり、雲のようでもあり、はたまた宇宙にいるような、不思議な感覚にさせてくれる。

すでに会期は終了していますが、葛飾北斎や伊藤若冲の作品、海外初公開の田中一村など、さまざまな時代のさまざまな作品が一堂に会すとあり、大きな話題になりました。

真夏の美術鑑賞は涼しく猛暑を乗り切ることができ、多くのアーティスト、作品との出会いを創出してくれました。

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